園田喬しの日記で振り返る「インドネシアアーティスト招へい事業」

1月21日(日)

インドネシアアーティスト招へい事業

遠藤さんとナナンを誘って朝風呂へ。午前中に神楽上演を観劇し、親切にして下さった神楽門前湯治村の方々に御礼を述べて、広島県三次市へ移動。この日は近隣の神楽団が複数参加する共演大会があり、前日もお世話になった久保会長の計らいで入場券を都合して頂き、観劇できることに。複数の神楽団が参加するということは、それぞれの演出の違いを観比べることができ、改めて神楽上演の幅広さを感じる。エンターテインメント性の高さ、劇場内を盛り上げるライブ感、立ち見も困難なほど溢れかえる超満員の会場の熱気は、日本語が分からなくてもしっかり伝わり、インドネシアアーティストたちも大変興味を寄せていた。終演後はバスで京都へ移動。移動中は神楽の興奮冷めやらぬ状態で、例によって楽しい振り返りの時間に。京都市内へ入り、そのまま宿泊。

1月22日(月)

インドネシアアーティスト招へい事業
インドネシアアーティスト招へい事業

本日はオフ日。個人的にやらねばならぬ仕事も抱えており、部屋で滞っていた諸連絡などを済ます。インドネシアアーティストたちも思い思いに京都の町や神社仏閣、文化などを堪能したようだ。夜はプロジェクトメンバーの本郷さん全面協力により、京都在住の本郷さん宅へお邪魔してホームパーティを開く。みんなで鍋を囲みつつ、本郷さんの手料理を堪能し、お酒を交わしながら団らんに花が咲く。インドネシアアーティストたちが「美味しい、美味しい」と箸を伸ばす様子がとても嬉しい。お開きの前にひとりずつ仏壇に手を合わせ、本郷家のご先祖の皆様にもご挨拶。インドネシアアーティストたちは、神社仏閣の参拝でも、仏壇に手を合わせる時も、とても真剣に心を込めて祈る。オフ日にも関わらず充実した交流ができ、本郷さんに心から感謝。

1月23日(火)

インドネシアアーティスト招へい事業

国際交流基金京都支部で、木ノ下さんによる木ノ下歌舞伎のレクチャー。木ノ下さんの活動にはみんな強い興味を示しており、木ノ下歌舞伎の上演映像を観ながら、インドネシアアーティストから質問ラッシュが続く。夜は国際交流基金アジアセンターの主催事業「NOTES:composing resonance」プロジェクトのメンバーとの合同懇親会に参加。インドネシア料理のお店で、美味しいインドネシア料理に舌鼓。日本語の堪能なインドネシア人も、インドネシア語の堪能な日本人もいて、テーブル各所で熱いトークが広がる。

1月24日(水)

インドネシアアーティスト招へい事業

早朝にホテルをチェックアウトし、新幹線で東京へ。インドネシアアーティストたちは、明後日から伝統芸能に関するレクデモを行うため、午後はアジアセンター本部でその準備にとりかかる。ノートパソコンで資料を作成したり、必要な道具を調えたり、会場の設営方法を打合せたり、みんなの集中力がどんどん高まっているのを感じる。残りの東京滞在も楽しみだ。

1月25日(木)

インドネシアアーティスト招へい事業

午前中はアーティストたちを囲み、これまでの振り返りを行う。積極的な意見が多く出て、彼らも、私たちも、共に学ぶべき、経験すべきことがまだまだあることを実感。交流という意味では、連日濃密な時間を過ごせていることに感謝。午後から園田による現代演劇のレクチャーを行う。本日夜に観劇する『秘密の花園』の作品解説に特化して、観劇の介助になるような内容を心掛けた。そのまま東京芸術劇場にて『秘密の花園』を観劇。この招へいで現代劇を観るのは初めてなので、みんなの反応がとても楽しみだった。幕間の休憩中や終演後に聞いた感想は大変興味深く、改めて「伝統と現代」という二軸について考えた。

1月26日(金)

インドネシアアーティスト招へい事業

いよいよ今日から、インドネシアアーティストたちによるレクデモが始まる。本日の主役はデウィ。バリ舞踊のレクデモだ。デウィが用意した内容は、座学、映像資料、実演、明るいトークなど、非常にバランスが良く、かつ貴重な機会だったと思う。特にバリ舞踊の実演はとても優美で、観客の反応も上々。近年のバリ島ではアグン山の噴火があり、そのニュースは日本にも広く伝わっている。噴火を鎮める祈りを込めたオリジナルの新作舞踊など、現代性を併せ持つ舞も披露された。レクデモ開催期間中は、楽屋的なスペースを設けており、その楽屋でアーティストたちとワイワイ過ごす時間も楽しい。

1月27日(土)

インドネシアアーティスト招へい事業

本日のレクデモは、木ノ下さんによる「歌舞伎」と、アノンによる「ジャワ音楽」の二段構え。「歌舞伎」は、日本人の観客はもちろんのこと、インドネシアアーティストたちも興味深く見てくれた。木ノ下さんの歌舞伎解説は、切れ味が鋭いのに用いる言葉は柔らかく分かり易い。彼の講義は何度聴いても新しい発見がある。アノンはインドネシア伝統音楽の専門家であり、ジャワ舞踊の踊り手でもあり、かつ芸術大学で講師を務めている。その知識範囲は幅広く、活動も多岐に渡り、座学の充実が目立つ内容に。後半は演奏や舞踊の実演もあり、レクデモの締めに行われた、チャトゥールとナナンの3人による即興コラボレーション演奏は大いに盛り上がった。

1月28日(日)

インドネシアアーティスト招へい事業
インドネシアアーティスト招へい事業

レクデモ最終日であり、私たちが共に過ごす最終日でもある。ワヤン・クリッのレクデモを、それぞれチャトゥールとナナンが担当。2人ともダラン(人形遣い)だが、年齢も活動環境も異なるので、ふたつの異なるレクデモが同時に見られたのは、大変貴重な機会だったと思う。ナナンは「ワヤン・カンチル」という豆鹿を主人公とする動物の人形を用いるワヤンを披露し、チャトゥールは「ワヤン・ヒップホップ」というヒップホップ文化を取り入れた現代的なワヤンを披露。ふたりのダランと音楽家アノンによる、贅沢な伝統的ワヤンも抜粋上演された。ワヤン・クリッ上演自体が珍しい日本で、尚かつワヤンの発展・普及に取り組んでいる気鋭ダランによる連続上演は、重ねて言うが大変貴重だ。観客の反応もとても良かったと思う。全てのレクデモを終え、撤収準備を済ませた後、国際交流基金の一室にて最後の懇親会。この日はインドネシアと日本、双方の食文化をミックスしたスペシャルメニューが振る舞われた。この懇親会でも、会話の中心はインドネシアと日本の伝統芸能のことばかり。生涯話しても話題が尽きないのでは? と思えるほど、伝統芸能のことを語り続けた2週間だった。今夜が最後日なので、もっと惜別の言葉が出るのかな? と予想していたが、そういうこともなく、むしろみんな、次に会えることを確信しているような素振りだった。彼らのこういうメンタリティにも見習うことが多い。懇親会が終わり、それぞれの荷物を持ち、地下鉄の駅まで移動。そのままごく自然に、スッと別れた。お別れをする際のインドネシア語は「サンパイ、ジュンパ!(また会いましょう)」と言うそうで、この招へい期間中に覚えた。駅の改札やホテルのロビーで、みんなと連日交わしたこの言葉。正に全員が「また会おうね!」という気持ちで別れた。

日程表

日付活動内容
1/13 (土)インドネシアのアーティスト到着
横浜能楽堂にて『能の花、能を彩る花』を観劇。施設見学
1/14 (日)宝生能楽堂にて宝生流「月並能」能、翁/狂言観劇。楽屋見学
宝生和英さんによるワークショップ
1/15 (月)国際交流基金本部にてミーティング。木ノ下裕一さんによる歌舞伎レクチャー
その後、歌舞伎座にて『勧進帳』ほか観劇
1/16 (火)国立劇場にて『小栗判官』観劇。楽屋にて尾上菊之助さんと意見交換
1/17 (水)国際交流基金本部にて、藤間勘洋舞さんによる歌舞伎/日本舞踊レクチャー
東京から大阪へ移動
1/18 (木)国立文楽劇場にて、昼の部/夜の部 観劇
1/19 (金)国立文楽劇場にて、猪又さんによる古典芸能概説、神田さんによる神楽概説、文技芸員によるレクデモと交流
1/20 (土)バスで移動後、神楽門前湯治村にて、施設見学 神楽鑑賞 神楽団との交流、意見交換
1/21 (日)(引き続き)神楽門前湯治村にて神楽鑑賞後、バスで移動
三次市民ホールきりりにて神楽大会
1/22 (月)この日はオフ(本郷さんのお宅で鍋パーティー)
1/23 (火)国際交流基金京都支部にて、木ノ下さんによる木ノ下歌舞伎レクチャー
夜は、レストラン「バリバリインドネシア」にて、NOTESプロジェクトメンバーと合同懇親会
1/24 (水)京都から東京へ移動後、国際交流基金本部にて、明日からのレクデモの準備作業
1/25 (木)池袋にて、振り返りインタビューと、園田さんによる現代演劇レクチャー
その後、東京芸術劇場にて『秘密の花園』を鑑賞
1/26 (金)国際交流基金本部にて「バリ舞踊」レクデモ開催
1/27 (土)国際交流基金本部にて「歌舞伎」レクデモと「ジャワの音楽」レクデモ開催
1/28 (日)国際交流基金本部にて「ワヤン・クリッ」レクデモ開催。終了後、お疲れさま会